かぜつち模様染工舎

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小さきものから

h.namba2026年4月10日
蚕

ちょうどこの冬、調べものをしているなかで、 以前 中伊豆資料館 で購入した『中伊豆町誌』を読み返した。

この梅木の地域に養蚕があった項の 衣食住へと目を進めると、 この土地では、絹や木綿の反物を自ら織り、 染物店(藍)で染め、日々の衣としていたことが記されている。

染色、藍染で、 素材から布となり、身にまとうところまでが、 地域の中でひとつながりの営みとして成立していた。

明治後期以降、呉服の流通が広がることで、 その循環は次第に移行され無くなっていったが それ以前には確かに、土から衣服へと作られる営みがあった。

この土地で農業をやろうと移り住んだ。 けれど、藍を育てる人、綿を育てる人、蚕を育てる人の姿に (みんないい出会い) 尊敬できる方々に触れるたび、 それがどれほど厳しい営みであるかを思い知らされる。

土につながることは、作り手にとって大きなよろこびであるはず。 同時に、それは簡単に手を出せるものではないとも感じている。

良いものをつくるために、日々の営みのなかで 命を削っている人たちを見てきた。 だからこそ、自分の仕事もまた、生半可なところには置けない。

土という言葉は、木や火、水、金より特に重く今感じている。

そんなことを思いながら、 答えのない問いに、しばらく悶々と立ち止まっていた。

そんな折、チビは目を輝かせながら、 糸ができること、布が織られること、藍で染まることを、 ひとつひとつ楽しそうに知っていく。

その姿が嬉しくて、 今は蚕を飼い、繭になるまでを観察することにした。

小さき者から、 たくさんのことを教えられている。

失敗してもいいのだと。 その姿が、静かに教えてくれている気がする。